試算表とは?見方・読み方と決算書との違いを税理士がわかりやすく解説

「試算表をもらうけれど、正直どこを見ればいいのか分からない」。

そう感じている経営者の方は少なくありません。試算表は、日々の記帳が正しいかを確かめると同時に、今の会社の経営状況をひと目で映し出す、とても大切な資料です。

この記事では、試算表とは何かという基本から、3つの種類、決算書との違い、損益計算書と貸借対照表の見方、そして経営者がチェックすべきポイントまでをやさしく解説します。読み終えるころには、毎月の試算表を経営判断に活かす手がかりが持てるはずです。

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試算表とは?記帳の正しさと経営状況がわかる表

試算表とは、日々の仕訳を集計し、勘定科目ごとの金額を一覧にまとめた表のことです。簿記では取引を借方と貸方に分けて記録しますが、その記録が正しく積み上がっているかを確認する役割を持っています。月次で作成すれば、その時点までの経営状況を把握する資料にもなります。

試算表の役割は「記帳のチェック」と「経営の把握」

試算表には大きく2つの役割があります。1つ目は、日々の記帳に入力ミスや漏れがないかを検証することです。借方と貸方の合計が一致しているかを見ることで、帳簿づけの正しさを機械的に確かめられます。これが試算表という名前の由来でもあります。

2つ目は、今の会社がどんな状態にあるのかを知ることです。決算を待たずに、その時点までの売上や利益、手元のお金、借入の残高などを確認できます。つまり試算表は、記帳の答え合わせと経営の健康診断を同時に行える、便利な資料だと言えます。

なぜ借方と貸方の合計が一致するのか

複式簿記では、1つの取引を必ず借方と貸方の両面から記録します。たとえば現金で備品を買えば、備品が増えた分と現金が減った分を同じ金額で両側に書きます。この仕組みがあるため、すべての取引を集計すると借方と貸方の合計は必ず一致します。

逆に言えば、合計が一致しないときは、どこかで入力ミスや記帳漏れが起きているサインです。試算表は、その不一致を早い段階で見つけるための関所のような存在です。正しい帳簿は、正しい申告と経営判断の土台になります。

試算表は月次で作るのが理想

試算表は、毎月作成して確認するのが理想です。月ごとに数字を見ていれば、売上の変化や経費の増減、資金の動きにいち早く気づけます。年に一度の決算でまとめて確認するよりも、打てる手が格段に増えます。

毎月の試算表を見る習慣があると、問題が小さいうちに対処できます。たとえば利益が想定より落ちていれば、決算を待たずに対策を考えられます。月次試算表は、経営のハンドルを早めに切るための計器盤のような役割を果たします。

試算表の3つの種類|合計・残高・合計残高

試算表には、まとめ方の違いによって3つの種類があります。合計試算表、残高試算表、そして両方をあわせた合計残高試算表です。どれも同じ帳簿から作られますが、見たい情報によって使い分けられています。それぞれの特徴を押さえておきましょう。

合計試算表|取引の総額がわかる

合計試算表は、勘定科目ごとに借方の合計と貸方の合計をそのまま並べた表です。一定期間にどれだけの金額が動いたか、取引の総額を把握するのに向いています。売上や仕入の規模感を大きくつかみたいときに役立ちます。

一方で、合計だけでは各科目に最終的にいくら残っているかは分かりません。たとえば現金がたくさん動いていても、結局いま手元にいくらあるのかは読み取りにくいのです。総額を見る表だと理解しておくとよいでしょう。

残高試算表|今の残高がわかる

残高試算表は、各勘定科目の借方と貸方を差し引きした残高だけを並べた表です。現金がいくら残っているか、借入がいくら残っているかなど、今の状態を知るのに適しています。経営者がもっとも見やすいのは、このタイプです。

取引の総額は分かりませんが、その分すっきりと現状が読み取れます。月末時点の財産や負債を確認したいときに重宝します。経営判断の場面では、この残高試算表が中心的に使われます。

合計残高試算表|両方を一枚で

合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を1つにまとめた表です。取引の総額と現在の残高を、同じ表のなかで同時に確認できます。情報量が多いぶん、実務でもっともよく使われる形式です。

会計ソフトを使えば、これらの試算表は自動で作成されます。どの形式で見るかを切り替えられることも多く、目的に応じて使い分けられます。普段は合計残高試算表を見ておけば、必要な情報はおおむねカバーできます。

試算表と決算書の違い|タイミングと役割で考える

試算表とよく似た資料に決算書があります。どちらも会社の数字をまとめたものですが、作成するタイミングと使う目的が異なります。この違いを理解すると、試算表の位置づけがはっきり見えてきます。

試算表は期中、決算書は期末に確定する

試算表は、事業年度の途中の任意の時点で作る、いわば途中経過の資料です。確定前の数字なので、社内の管理やチェックのために使われます。月末ごとに作れば、その月までの状況をこまめに追えます。

これに対して決算書は、事業年度が終わったあとに数字を確定させて作る、正式な成績表です。税務申告や銀行への提出、株主への報告など、外部に示すための資料として使われます。試算表が下書きなら、決算書は清書にあたると考えると分かりやすいでしょう。

月次試算表は損益と財政状態の両方がわかる

月次で作る試算表には、損益計算書にあたる部分と貸借対照表にあたる部分の両方が含まれています。つまり、その月までにどれだけ儲かったかと、今どれだけの財産や借入があるかを、同時に確認できます。決算を待たずに会社の全体像をつかめるのが強みです。

この性質があるからこそ、試算表は経営の意思決定に役立ちます。利益の出方を見て対策を考えたり、資金の余裕を見て投資の判断をしたりできます。決算書が一年の結果なら、試算表は今この瞬間の地図のような存在です。

試算表の構成|損益計算書と貸借対照表

試算表の中身は、大きく損益計算書にあたる部分と貸借対照表にあたる部分に分かれます。前者は一定期間に儲かったかどうか、後者は今どれだけの財産があるかを表します。この2つの読み方が分かれば、試算表はぐっと身近になります。

損益計算書|売上から利益までの流れ

損益計算書は、売上からさまざまな費用を差し引いて、最終的にいくら利益が残ったかを示します。まず売上から仕入や原価を引いて粗利を出し、そこから人件費や家賃などの経費を引いて営業利益を求めます。本業でどれだけ稼げたかが見える部分です。

営業利益にさらに利息などを加減すると、経常利益が求められます。会社が通常の活動でどれだけ儲かったかを示す、もっとも大切な数字です。売上の大きさよりも、最終的に何円残ったかに注目すると、会社の実力が見えてきます。

貸借対照表|今いくら持ち、いくら返すか

貸借対照表は、ある時点で会社がどれだけの財産と借金を持っているかを表します。左側に現金や売掛金などの資産、右側に借入金などの負債と、その差である純資産が並びます。今この瞬間の会社の体力が分かる部分です。

なかでも経営者が見ておきたいのは、手元の現預金と借入金の残高です。利益が出ていても現金が乏しければ資金繰りは苦しく、逆に現金に余裕があれば多少の赤字にも耐えられます。損益とあわせて、お金の状態を確認することが大切です。

経営者が試算表で見るべき4つのポイント

試算表には多くの数字が並びますが、経営者がすべてを細かく見る必要はありません。大きく動いた項目と、経営の急所になる数字に絞って確認すれば十分です。ここでは、特に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

経常利益が何円残っているか

まず注目したいのは経常利益です。売上の大きさよりも、通常の活動で最終的に何円残ったかが、会社の実力を表します。銀行が融資の判断で重視するのも、この経常利益です。

たとえ売上が大きくても、経費がかさんで利益がほとんど残らなければ、経営は楽になりません。逆に売上が控えめでも利益率が高ければ、手元にしっかりお金が残ります。自社の経常利益の水準を、頭に入れておくとよいでしょう。

現預金は月商の何ヶ月分あるか

次に見たいのが、手元の現預金です。一般に、月の支払いの3ヶ月分ほどの現金があると安心と言われます。今いくら持っているかによって、同じ状況でも経営の緊急度は大きく変わります。

注意したいのは、納税や大きな支払いが控えている場合です。今は十分に見えても、税金を払ったあとに資金が細る場面は珍しくありません。先々の支払いまで見越して、現預金の余裕を確認しておくことが大切です。

借入金はあと何年で返し終わるか

借入金は、残高と毎月の返済額をあわせて見ます。毎月いくら返していて、あと何年で完済できそうかが分かると、資金計画が立てやすくなります。返済の見通しが立つだけでも、経営の安心感は変わります。

返済が利益や現金の範囲で無理なく回っているかも、あわせて確認します。利益が出ていても返済が重ければ、手元のお金は増えません。借入は悪ではありませんが、返済とのバランスを意識して見ておきましょう。

役員貸付金が増えていないか

見落とされがちなのが、役員貸付金です。これは会社から社長個人へお金が出ている状態を表し、銀行の評価では不利に働きやすい項目です。残高が増えていないか、毎回確認しておきたいところです。

役員貸付金があると、融資の審査で「会社のお金が外に出ている」と見られることがあります。放置すると借入がしにくくなる場合もあるため、計画的に減らしていく方針を持つことが大切です。気づいたら早めに対処するのが安全です。

試算表を経営に活かすには

試算表は、ただ眺めて終わらせるともったいない資料です。数字を読むだけでなく、そこから次の一手を考えることで、本当の価値を発揮します。せっかく毎月作るのですから、経営判断の材料として使いこなしたいところです。

数字を読むだけでなく次の一手につなげる

大切なのは、試算表を見て「今どうなっているか」を知るだけで止めないことです。利益が落ちていればその原因を探り、資金が細りそうなら早めに手を打つ。現状の確認から、これからの行動へとつなげる姿勢が大事です。

数字が苦手でも心配はいりません。すべての科目を理解する必要はなく、大きく動いた項目と急所になる数字を押さえれば十分です。一つでも気づきが得られれば、その試算表は経営に活きたと言えます。

顧問税理士と毎月見ると変化に早く気づける

試算表を一人で読み解くのが難しいときは、顧問税理士と一緒に確認する方法があります。専門家の視点が加わると、見落としがちな変化や注意すべき点に早く気づけます。毎月の習慣にすると、その効果はさらに大きくなります。

数字を一緒に読みながら、次に何をすべきかまで話し合えれば、試算表は経営の羅針盤になります。報告を受けるだけの関係ではなく、相談しながら進める関係をつくること。それが、毎月の試算表を成果につなげる近道です。

よくある質問

試算表はいつ作るものですか?

試算表は、事業年度の途中であればいつでも作成できます。経営に活かすことを考えると、毎月作って確認するのが理想です。月次で見ていれば、売上や資金の変化に早く気づき、決算を待たずに手を打てます。会計ソフトを使えば自動で作成されるため、作る手間そのものは大きくありません。

試算表は自分で作れますか?

会計ソフトに日々の取引を入力していれば、試算表は自動で出力できます。その意味では、自分で作ることも十分に可能です。ただし、入力が正しいかどうかや、数字の読み方までは別の話になります。記帳に不安がある場合や、経営判断に使いたい場合は、税理士と一緒に確認すると安心です。

試算表の借方と貸方が一致しないときは?

合計が一致しないときは、どこかで入力ミスや記帳漏れが起きています。多いのは、片側だけ入力してしまったケースや、金額を打ち間違えたケースです。会計ソフトであれば、自動でバランスが取られるため不一致は起きにくいですが、手入力の補正をした際などに生じることがあります。原因が分からないときは、税理士に確認してもらうのが確実です。

試算表と決算書はどちらが正式な書類ですか?

外部に示す正式な書類は決算書です。試算表は確定前の途中経過であり、社内の管理やチェックのために使う資料という位置づけです。税務申告や銀行への提出には決算書を用います。一方で、日々の経営判断には、こまめに作れる試算表のほうが役立つ場面が多くあります。

まとめ

試算表とは、日々の記帳が正しいかを確かめると同時に、今の経営状況を映し出す資料です。合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類があり、損益計算書にあたる部分と貸借対照表にあたる部分の両方を含みます。決算を待たずに会社の全体像をつかめるのが、最大の強みです。

経営者が見るべきは、経常利益、現預金、借入金、役員貸付金の4つに絞れば十分です。そして大切なのは、数字を確認して終わりにせず、次の一手につなげることです。毎月の試算表を読み解く習慣が、会社を一歩ずつ前に進める力になります。

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